ちょっとひとこと 栄養士から


第二十回:食事の改善、まず何をしたらいいの?-主婦編-

 今月はご自宅にいる時間が多い方、特にご自身が食事内容を決める立場にある主婦の方で考えてみましょう。その方の食生活は、『食事内容』×『その食事量』×『食べる時間帯』で決まると私は思っています。今回はこの中の『食事内容』と『その食事量』の改善についてご紹介しましょう。
    
 主婦の方は、家族の料理を作ったり、食材料を買ってきたりするので、自分が食べるものを決める立場にあります。自分で決めることができるのは、自由があり良いことではありますが、その分、自分がしっかりコントロールしないと食事が乱れてしまいます。それに、ご自身だけのことではなく、家族全体に影響を与えることを意識しましょう。
    
 私は大学の卒論で、子どもの好き嫌いについて調べました。
その結果は、お母さんが嫌いな野菜は、子どもも嫌いという結果でした。なんとなく想像がつく結果ですが、これにはどんな意味があるのでしょうか?お母さんが嫌いな食べものを好んで調理するでしょうか?多分、食卓に登場する頻度が少ないため、お子さんも食べる機会が少ない、もしくはまったくないので、嫌いな野菜になってしまったと考えられます。これは、調理をする方の嗜好や考えが、その家族の食べるものをコントロールしているということです。
    
 買い物をして自分で調理をされている方は、どうしても自分の好きなものを選びがちになってしまいます。その食材によっては、肥満の原因になったり、ある栄養素だけ過剰に摂取してしまったり、その反対に他の栄養素が不足してしまう可能性もあります。そのため、主婦の方の食事の改善のポイントは、「偏りなく食材を選び、さまざまな調理法で料理を作る」ことです。

 毎食献立も考えるのは大変だとよく聞きます。
ある程度レパートリーがある方なら、そのレシピの一部を他の材料に変えて、冷蔵庫にある材料でまったく違った料理を作り出すこともできるでしょう。しかし、まだ料理のレパートリーが少ない方は、偏った食材や調理法になりがちではないでしょうか?今は、テレビ番組や書籍、インターネットでもさまざまなレシピを見ることができます。料理のレパートリーを増やし、食材の組み合わせによって、味付けと調理法を考えられるように訓練をしてみましょう。
    
 もうひとつ。自分の食べている量を把握しておくことが大切です。
まずは品数です。ご飯やパンなどの主食、肉、魚、大豆製品、卵などをメインとした主菜、煮物やお浸し、野菜が入った汁物などの副菜を2品ぐらい用意していただくと、栄養素的にもバランスのとれた食事になります。
    
 特に主治医から食事の指導を受けていない方でしたら、カロリーを気にして食事をされる方は少ないでしょう。カロリー計算をきっちりする必要はありませんが、自分がどれだけ食べているかを把握しておく必要はあります。簡単な目安は体重です。体重が増えてきてしまったら、何か食べ過ぎている可能性があります。ずっと同じ量を食べていても太ってしまう場合もあります。それは、年齢的に代謝が落ちてきてしまったか、運動量が減ってしまったことが原因と考えられます。反対に体重が減ってしまうということは食事量が足りていない可能性があります。まず、自分の食べている量を把握しなければいけませんが、そのコツは、大皿に盛らずに、個々に分けて盛り付けることです。大皿に盛って食べると、洗い物が少なくなるメリットはありますが、好きなものばかり食べてしまうことや、自分がどのぐらい食べたかが把握できないデメリットもあります。
    
 また、作り過ぎたり、家族が残したものを無理して食べてしまうことはありませんか?食材を無駄にしないことはとても良いことなのですが、食べすぎてしまっては体に良くありません。計画的に料理を作ることは、健康のためにも必要な知恵です。余らないように作る、余ったものは明日のおかずにリメイクするなどの工夫をしましょう。

(2010年5月)



管理栄養士 秋山里美プロフィール


管理栄養士。
執筆、講演、食に関わるコンサルティングを中心に活動。著書に『カード式毎日のおいしい腎不全献立』監修に『高血圧を下げるおいしい食事』(いずれも主婦の友社)などがある。
管理栄養士秋山里美